カープの危機 なの だ
カープの危機なのだ。. 一部のAndroid端末ではカクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。アカウントをお持ちの方はカクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!アカウントをお持ちの方はカクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!アカウントをお持ちの方は カープの危機なのだ! (けものフレンズSS)千夜越しおりカープの危機なのだ!「カープの危機なのだ!」 ある日、アライさんがかばんちゃんとサーバルちゃんの元へやって来た。アライさんの隣にはフェネックちゃんがいる。「えっとー、えっとー」 アライさんが何を言っているのか分からないサーバルちゃんは困惑。「パークの危機は去ったよ?」 つい数日前、かばんちゃん達はフレンズ達と協力して巨大なセルリアンを倒し、ジャパリパークに平和をもたらしたばかりだ。「パークじゃない! カープなのだ!」「カ、カープ? なにそれ?」 はてなマークが伏せるサーバルちゃん。「カープとは鯉のことですよね?」 かばんちゃんが手を小さく挙げて言う。「えっ⁉ そうなの⁉」「うん。英語って言葉に鯉を変えるとカープってなるんだ」「そーなんだ、すごーい!」「鳥はバード、猫はキャットですね」「すごい、すごーい! それじゃあ、サーバルは?」「サ、サーバルは……すみません、わかりません。多分サーバルはサーバルだと思います」「なるほど! 私は私ってことだね!」 サーバルちゃんが目を輝かせて言う。「それじゃあ、狩りごっこの続きを――」「待つのだー!」 この場から立ち去ろうとしたかばんちゃんとサーバルちゃんをアライさんが止める。「カープの危機だと言っているのだ!」 地団駄を踏みながらアライさんは懸命に訴える。 しかしかばんちゃん達の反応は先程と同じ。「アライさーん」 フェネックちゃんがアライさんの肩を叩く。「もう少し詳しく話さないと」「うっ、そ、そうなのだ……。興奮してごめんなのだ」 アライさんは一つ謝ると落ち着いて説明を始めた。 ひろしまちほーにカープという野球チームがあり、オープン戦で下から数えた方が早い順位にいることを。「野球ってなに? オープン戦?」「ぐぬぬ……」 野球を知らないサーバルちゃんにアライさんはもどかしさを覚えるが、かばんちゃんが丁寧に説明してあげた。「それで私達は何をすればいいの?」「カープに入って、カープの戦力になってほしいんだってー」 フェネックがそう言うと「そうなのだ!」とアライさんが続く。「分かったよ! フレンズが困っていたら助けるのがフレンズだからそのカープ? ってチームに入るよ! いいよね? かばんちゃん?」「はい!」 こうして一同はひろしまちほーへ。 × × × ひろしまちほーの球場に到着。 そこにはすでに多くのフレンズがいて試合が始まるのを今か今かと待っていた。「それじゃあ、一時間後によろしくなのだ!」「えっ⁉ もう試合⁉」「そうなのだ! ルールは来る途中に説明したとおりなのだ!」 胸を張るアライさん。「ごめんねー、急なお話で」 フェネックちゃんがフォローする。「二人がチームに馴染めるよう、簡単に選手を説明するね。まずあそこにいるのがカピバラ三兄弟。みんな投手なんだ。向こうにいるのはムササビ。驚異的な守備力とバッティングセンスが売りの選手なんだ。そんでー、あっちにいるのがー」 フェネックちゃんが説明をしているとかばんちゃん達に気付いたカープの そしてみんなは自己紹介をして仲良くなった。なったのだが……。「うわっ⁉ あそこにいるのは誰⁉」 突然驚いたサーバルちゃんが指をさした方向にいたのは青の体に赤と緑のたてがみを持っているずんぐりとした「あの子はスラィリーなのだ! カープのアイドルなのだ!」「すら、すらい……すら……」 サーバルちゃんは「スラィリー」が上手く発音できないのか四苦八苦していた。 そうしている間に相手チームが到着した。今日のカープの相手は虎の「プレイボール!」 審判の声と共に試合が始まった。 試合はまさにシーソーゲーム。相手が点を取れば自分達も負けじと点を取る。お互いの力が拮抗したまま九回表に。 この回の表の攻撃はカープの攻撃。 カープ九点、相手チームは十点。 ノーアウト。ランナーなし。 このような場面でサーバルちゃんがヒットで出塁。 続いてフェネックが一塁線に送りバントを決めてワンアウト二塁。 そしてフェネックの次のバッターはアライさんである。『黒い尻尾見せ、畑を燃やせ、空を打ち抜く大アーチ。かっとばせーアライ! アライ!』 アライさんがバッターボックスに立った瞬間にアライさんの応援歌が球場を震わせた。 第一球。 見逃し。 第二球。 外に逃げるスライダーを空振り。 あっという間にアライさんは追い込まれた。「アライさーん」 フェネックがベンチからアライさんにエールを送る。 第三球。 アライさんはバットを振った。 バットの芯にボールが当たったときの心地よい音。 一瞬静まり返る球場。 そしてボールが観客席に入った瞬間、球場は今日一番の歓声に包まれた。「すごーい! すごーい!」 ベンチに戻って来たアライさんをみんなが迎えた。「アライさんはすごいねー」「当たり前なのだ!」 フェネックちゃんに褒められてアライさんは嬉しそうである。「本当にすごいです!」 かばんちゃんも褒める。「か、かばんさんに褒められて光栄なのだー!」「私はー?」「もちろんフェネックに褒められても光栄なのだ!」 × × × カープが逆転し、九回裏になった。 マウンドに上がったのはかばんちゃんだ。しかし彼女はワンアウトを取る間に二人のランナーを出してしまった。 そして次のバッターは四番のスマトラトラのトラトラだ。「うおおおおおおっ! こーい!」 咆哮するトラトラ。 かばんちゃんはそれに恐怖したが勇気を出して投げる。 ファール。投げる。ファール。投げる……。 両者譲らない攻防が続く。 かばんちゃんはこの厄介な「えい!」 かばんちゃんはボールを投げた。 甘いコース。ど真ん中。「貰ったあああ!」 トラトラ、フルスイング。だが。「んなっ⁉」 ボールが曲がった。トラトラに向かってくるように。 トラトラは詰まらせてしまう。しかし彼女は力任せに打球を運ぶ。「ああっ!」 誰かが叫んだ。しかし叫びは歓声に代わる。 なぜかと言うとセカンドのムササビちゃんが横に飛び込んでボールをダイレクトキャッチすると空中にいるままファーストに送球。「ゲームセット!」 審判が試合終了を告げた。「かばんちゃーん!」 サーバルちゃんがかばんちゃんに抱き着く。「すごい! すごい! 最後の、投げたボールが曲がったように見えたけどあれはなにー?」「ボールに横回転をかけて投げてみたんです。そしたら曲がって、芯を外すことができました」 かばんちゃんの解説に集まっていた「そのようなこと思いつかなかった」「やるやん!」「私にも教えてくれ!」 チーム関係なくかばんちゃんに投げ方を教えてもらうために「いいですけど、休ませてください。体中が筋肉痛で――」 そのとき、かばんちゃんの肩を誰かが叩いた。 振り向いたそこにいたのはずんぐりとしたペンギンのような――燕だった。その燕はスケッチブックを差し出した。『次はうちのチームに』 そして燕はかばんちゃんを抱きかかえてその場を去るのであった。「ちょっと待ってくださーい! まだ筋肉痛がー!」 かばんちゃんの悲鳴がひろしまちほーの空に消えた。 この試合を機にカープが勝利を重ねて、優勝をするのだがそれはまた別のお話。ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)応援したユーザーはいませんこの小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。