ゴー ファイ ランサム
1995年にクリーブランド・インディアンスから指名されたが拒否し、サウス・マウンテン短期大学に進学。その後グランドキ ャニオン大学に転校し、1998年にサンフランシスコ・ジャイアンツから9巡目指名(全体278位)を受け契約した。2001年にメジ ャーデビュー。この後8球団に所属するが、いずれもレギュラー獲得には至らず、守備固めでの出場が多かった。2013年12月に埼玉西武ライオンズと1年契約を結んだ。背番号6。移 …

第6話 光のランサムの歌「ここは……」 ランサムが目を覚ました場所、そこは西武ドームのネクストバッターズサークルだった。 ヘルメットは被っているし、手にはバット。準備は万端だった。 観客席からは、満員のファンの声援。 ランサムはスコアボードを見た。9回裏、2アウト、一点差。「ランサム、必ずお前に打席が回ってくる」「君は……セラテリ!? どうしてここに……」「何言っているんだ、シーズンずっと一緒に戦っていたじゃないか。そして遂に日本シリーズにまで来たんだ」 話している間に、前の打者浅村が四球で出塁。満塁になった。「さあランサム! お前のバットで優勝を決めて来い!」 半ば混乱しつつも、ランサムはバッターボックスに入った。 その瞬間、割れんばかりの歓声が球場、いや、埼玉全土に響き渡った。 そして、埼玉県歌となった応援歌も。 ゴーファイ!ランサム!ゴーファイ!ランサム!ゴーファイ!ランサム!ゴーファイ!ランサム! レッツゴーコーディランサム ランサム ランサム レッツゴーコーディランサム オオオオオ レッツゴーコーディランサム ランサム ランサム レッツゴーコーディランサム オオオオオ レッツゴーレッツゴー レッツゴーランサム レッツゴーレッツゴー レッツゴーランサム!『さぁここで迎えるのは球団創設以来最強の助っ人コーディ・ランサム! 今シーズン本塁打100本の大記録を打ち立てHR王に首位打者、打点王、最多安打、最多盗塁などタイトルを総ナメし他あらゆる指標でもぶっちぎりのトップ! シリーズでもこれまで三本のサヨナラHR! プライベートでは溺れている子供の救助や、倒れたお年寄りの救命、さらに難民キャンプへ自ら救援物資を届けた上紛争地域の治安を回復させるなど社会貢献も果たしノーベル平和賞受賞! 応援歌のCDは全世界一億枚の大ヒット! 今シーズンの活躍は既にハリウッドで映画化が決定しているまさに世界的英雄ランサム!』 ランサムは、自分なりに状況を整理した。「そうか……僕はきっと、この日本シリーズの緊張で短い夢を見ていたんだ……妙に現実的な夢だったけど……」 とにかく、今やることは決まっている。『ピッチャー、ランサムに対し第一球投げた!』 ランサムは、バットを振り抜いた。「ランサム!」 ハッ、と再び目を覚ました。今度は、見覚えのない場所だった。空は真っ赤に染まり、地面には人骨の山。なにかおどろおどろしい空間だった。「こ、ここは……??」 ランサムは必死で記憶を手繰り寄せた。そして、シャウエッセンケンプファーズとの試合を思い出す。「そうか、僕はあのとき死んで……だけど、僕を呼んだ声はいったい……」「ランサム、良かった目を覚まして……」 ランサムは自分の隣を見た。そこには、マキータがいた。「マキータ? 何故君がここに」「ランサム、貴方は今、生と死の間にいます……ですが、まだ復活は可能なんです」「ど、どういう事だい?」「それは私から話そう」 突如として空から響いた低音ボイス。見上げると、そこには巨大な黒い影。 禍々しい双角、黒い翼。顔は陰になり見えなかったが、人ならざる存在であることは確かだった。「君は一体……」「君などと気安く呼ぶな人間風情が! 我は冥王、死を司る冥府の神であるぞ」「そうか、ならばやはり僕は死んで……でも、それなら何故マキータもここへ?」「そうだランサム、貴様は確かに死の運命にある……しかし極限(アルティメンタム)にまで鍛え上げられたその肉体は、物理法則すらも超越しまだ生命活動を可能としているのだ。人間でありながら、恐るべき存在よ」「そうか……それで」「しかし命が冥府にまで来たことは確か。よってそこのマキータとか言うエルフの命を捧げさせることにより貴様を復活させることにした!」「な、なんだって!?」 ランサムはマキータを見た。マキータの顔は、覚悟の決まっている顔だった。「問題ありませんランサム、私のことは気にしないで下さい」「そんなことは出来ない! 君の命と引き換えに生き返ったとしても、僕は嬉しくない!」「いいのです。貴方がいなければ、ツツーミ王国はペナントレースに勝ち残れませんから……さぁ冥王よ! 私の命を使って!」 一歩進み出たマキータに、冥王が巨大な腕を伸ばす。「だ、ダメだ!」 ランサムは、その腕を押し止めた。「ダメだマキータ! 僕は君に一度命を救われている! 死ぬべきは僕だ!」「愚かな人間だ……私の決定に逆らえると思うな!」 冥王の体が黒き光を発し始めた。と同時に、腕を抑えるランサムも、その底知れないパワーを感じた。「うぅ……さ、流石冥王! なんたるパワー……」「無駄な抵抗をするな人間よ! 貴様は今肉体から離れ魂だけの存在……神である私に抗えるものか!!」 冥王の言葉は、決して大げさなものではない。並の人間であれば触れるだけで魂魄ごと雲散霧消し完全なる“無”となる冥王のパワー。少しでも抗えるだけで驚愕すべきことなのだ。「ランサム、やめて下さい! 私なら覚悟は決まっています!」「耐える……耐えてみせる! ここで僕が負けたらマキータが!!」「無駄な抵抗を……仕方ない、私の全力を見せてやろう!!」 冥王の発する光は更に強大になった。空は割れ、地面は揺れ、巨大すぎるエネルギーに空間すら歪み始めた。(くっ……だ、ダメだ……流石は冥王……もう限界か……) 暫く耐えていたランサムだが、もはや精神力が尽きようとしていた。人間としては破格の根性であったが、所詮神には叶わない……。「ラ、ランサム……」「すまないマキータ……僕はもう……」「ランサム……ランサーム……」「マ、マキータ……?」 マキータの口から、歌声が聞こえた。 それは意識した物ではなく、ランサムを想うマキータの心が呼び起こした奇跡の歌。「レッツゴーコーディランサーム ランサーム ランサーム レッツゴーコーディランサーム オオオオオ」「こ、この歌は……!」 その歌声はなんと、なんと心に響くのであろうか。 魂を揺さぶるリズム、全身を震わすメロディ、叙情的で深い歌詞。 限界かと思われていたランサムの精神力は、何倍にも増幅していた。「レッツゴーコーディランサーム ランサーム ランサーム レッツゴーコーディランサーム オオオオオ」「レッツゴーレッツゴー レッツゴーランサム! レッツゴーレッツゴー レッツゴーランサム!」「な、なんだこのパワーは! 人間如きが!」 応援歌によりさらに強化されたランサムの熱いハートは、もはや神にすら焼き尽くすことは出来ない。「うおおおおおおおお!!!」「ば、馬鹿な! 冥王たるこの私がああああ!!!」「はっ!」 目を覚ました。今度こそ現実の世界。「ランサム! 無事だったか!」 ツツーミ王国ケーニッヒドーム救護室。「よかったぜランサム、マジで死んじまったかと……」 目覚めたベットの横には、アサミラがいた。後で聞いた話では、夜通し付きっきりでいてくれたという。 起き上がったランサムを見て、泣いていた。「そうだマキータ……マキータは!?」「マキータは……」 ランサムはカーテンを開け、隣のベッドに急いだ。「マキータ!」「ラ、ランサム……」 まだ起き上がれてはいないが、マキータも目覚めていた。 安心したランサムは、ホッと胸を撫で下ろした。「ところでアサミラ、試合はどうなった?」「試合なら大丈夫だ、昨日今日と連勝したからよ」「連勝? ということは僕は一日以上気を失っていたのかい?」「あ」 アサミラは、露骨にしまったという顔をした。命の危機にまで瀕したランサムである、試合は休ませなければらないが、その熱い性格を考えれば休養を取ろうとはしないだろう。「それはいけない……すぐに明日の試合に向けて調整をしなければ!」「ま、待てランサム! お前は休むべきだ!」「それは出来ない」 ランサムは既に屋内練習場に向かって歩き始めていた。 並の男ならば全身が爆散して塵も残らぬであろうほどの衝撃を受けている。だがランサムの鍛え上げられた強靭な肉体は、驚異的な回復力を見せていた。 無論それだけではない。この回復は、不屈の精神力があってこそでもある。「ランサム! 傷が開くぞ、明日は休め!」「ダメだ……僕が出られなかった昨日の試合、シャウエッセンケンプファーズはオーターニを温存したのだろう?」「え? どうしてそれを……」「わかるさ。彼等はきっと、この三連戦で僕を完全にリタイアさせる気でいるんだ。それに……」「それに……?」「大量破壊野球マシーン“オーターニ”……彼とは、決着をつける必要がある!」ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)応援したユーザーはいません機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
1: 2017/04/24(月)02:10:30 ID:oke たすけてゴー!ファイ!ランサム!