ゾウリムシ 実験 食胞

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地球科学コミュニケーター・渡邉克晃のブログです。 こちらの動画はゾウリムシの電気走性の様子を撮影したものです。一斉に移動する様子がすごいですよね!実験の詳しい説明が記事の後半にありますので、ぜひご参照ください。 さて、水中の微生物であるゾウリムシ( 体長は0.2 mm(200 μm)ほどで、バクテリアを食べて生きています。分類としては、 単細胞生物とは言え、下の図のように、ゾウリムシには生命体に必要なものがすべてそろっています。 核があり、口があり、消化器官があり、排せつのための器官もあります。また足の代わりになるのは細胞表面に生えた繊毛(せんもう)で、この繊毛を動かして水中を移動します。 ゾウリムシは中学校理この記事では、ゾウリムシの生息場所は、水田、河川、池や沼などです。近くに水田などがあれば自分で採りに行くこともできますが、実験のたびに採りに行くのはやはりたいへんです。自分で培養できれば、少なくとも一年くらいはゾウリムシを継続して使用できて便利です。 さて、その培養方法ですが、2017科学教育研究協議会関東ブロック学習会(11月4日、高崎市)にて、濱中修先生からとても簡単な方法を教えていただきました。教えられた通り実践してみましたので、その様子をここで紹介したいと思います。濱中先生から分けていただいたゾウリムシがこちらです。「麦茶培地」を入れた小さなペットボトルでいただきました。 拡大すると、細長い白いつぶつぶが見えると思います。これがゾウリムシです。いっぱいいますね。 培地はおすすめはサントリーフーズ株式会社の「防腐剤(ビタミンC)が入っていないため、培養に適しているとのことです。 これを希釈せずにそのまま使います。ちなみに自分で煮出した麦茶を使う場合は、「つぶまる麦茶」(小川産業株式会社)がいいそうです。十分に増殖したら、新しい麦茶培地に移します。上記の写真の状態が「十分に増殖した状態」だったので、このくらいの密集度を目安に培地の入れ替えを行うと良いでしょう。 さて、入れ替える容器ですが、今回は大きめのペットボトルに移し替えることにしました。 こちらが入れ替える前の状態です。新しい培地への移し替えは、 新しい培地となるペットボトル(写真右)は、元のペットボトル(写真左)よりも十分に大きく、麦茶培地の量はおよそ3倍です。ゾウリムシが増殖した古い培地を、新しい培地に流し込みます。 こちらが移し替えた後の状態です。古い培地を流し込んでも、 これが実は重要で、ゾウリムシに十分な酸素を供給してあげるためです。 そして、閉めると窒息しますね……。必ず緩めておいてください。培養フラスコの場合はふたが無いのですが、口を開けたままにしておくとゴミが入るので、アルミホイルなどをかぶせておくと良いでしょう。 なお、遠方に持ち運ぶような場合には、どうしてもペットボトルの口を閉める必要が出てきます。そのようなときには、金魚飼育用などで売られている「中に入れておけば移動中の酸素欠乏を防ぐことができます。室温にもよりますが、この方法を継続することで、少なくとも1年くらいはゾウリムシを培養し続けることができます。ゾウリムシはいろいろな「走性」とは、いくつか走性の例を挙げたいと思います。温度勾配のある溶液中で、ある温度域に向かって移動する性質です。「走熱性」とも言います。ちなみに大腸菌の場合、相対的に温度の高い方へと移動します。重力と同じ方向、あるいは重力と反対方向に移動する性質です。反対方向に移動するため、特に「負の重力走性」と言います。明るさに反応して移動する性質です。「走光性(そうこうせい)」とも言います。化学物質の有無や濃度差によって、一定の方向に移動する性質です。「走化性」とも言います。化学物質のある方へ移動するか、化学物質から遠ざかる方へ移動するかは、前者を「正の走性」、後者を「負の走性」と言います。 ゾウリムシの場合の例を挙げると、 これらのデータは、丸岡禎『教材としての原生動物(3)−ゾウリムシII』(原生動物学雑誌38,115−132,2005)を参考にしました。ちなみに大腸菌の場合、アミノ酸や糖などの栄養物質には近づき、金属イオンからは遠ざかる、という化学走性を示します。直流電圧がかかったとき、陰極側あるいは陽極側へと移動する性質です。「走電性」とも言います。今回実験で観察するのは、直径5 ㎜の炭素電極を使い、乾電池で1.5 Vの電圧をかけます。すると、ゾウリムシは陰極に集まってきます。炭素電極がなければ、シャープペンシル用の極太の芯(例えば1.3 mm径)でも代用できます。まずはビーカーなど少し大きめの容器に、ゾウリムシが十分に増えた培養液を注ぎます。そして、電気走性を利用して、陰極側にゾウリムシを集めます。陰極の周りにゾウリムシが集まってきたら、密集度の高い部分をスポイトで吸い取り、シャーレに移します。これで、ゾウリムシが高濃度で入っている水溶液を準備できました。 次に、シャーレを黒い画用紙の上に置きます。そして、真横からLEDライトで照らします。こうすることで、黒い背景の中に白く照らされたゾウリムシが浮かび上がります。これで準備完了です。 いよいよ実験です。電池ボックスにつなげた状態の2本の電極(陽極と陰極)を、同時にシャーレの中に入れます。すると……。動画でその様子をご覧ください。  動画では、途中で電極の位置を入れ替えていますね。電極を入れ替えると、今まで集まっていたところが陽極になりますので、集まっていたゾウリムシは散り散りになります。そして、新たに出現した陰極側へと移動していきます。 以上がゾウリムシを使った電気走性の観察方法です。簡単にできますので、ぜひ挑戦してみてください。■ 映画やテレビドラマが1ヶ月見放題。■ 参加費11万円で4000名以上が殺到。■ Amazon電子書籍ランキング1位。 サイエンスコミュニケーター 東京大学地球生命圏科学グループ、環境省原子力規制委員会などで鉱物学の研究に従事し、3年間の教職を経て2019年より現職。サイバー大学TA兼務。 ▶︎ ▶︎