蒼穹のファフナー exodus 19話
2004年7月4日から12月26日までtvシリーズ1期『蒼穹のファフナー』がテレビ東京ほかで放送された。 全26話。1期では少年少女達の日常が人類の存亡を賭けた戦いへと転じ、敵性存在との接触を経て、最終的には普通の中学生としてのドラマに帰結する物語が描かれた 。 翔子は一期6話でいなくなり、その意志を継ぐのは真矢の役割だった。しかし、真矢がファフナーに乗ったのが一期19話と遅く、物語が終盤に向けて収束していく時期でもあった。 冲方丁は一期終盤のインタビューで真矢で描けなかった内容があると発言している。一期の時に考えていたものと『EXODUS』で描いたものが同じだという保証はないが、冲方丁は機会があれば真矢についてもう少し描きたいと考えていたのだと思う。  『EXODUS』では13歳、14歳だった一期のメンバーが18歳、19歳になるのに伴い、自らの考えの及ぶ対象が二人称から三人称へと広がっていく様子が描かれている。 ・一騎はマークザインで同化の肩代わりする対象は一緒に戦う島のパイロットから人類軍のファフナー・パイロットへと広がった。 ・広登は島の大人たちが子どもに教えた島の平和を世界に広めたいと思っていたので、島外派遣に参加した。 一騎や広登のような個人だけでなく、いなくなった人の考えを引き継いだ人もまた『EXODUS』でその考えを二人称から三人称、さらに第四人称へと広げていった。  一期の物語開始前に一騎と総士の間には一騎が総士を傷つけるという事件があったが、実は真矢と翔子の間にも同じような事件があった。しかし、アニメでは一切触れられておらず、ドラマCD『STAND BY ME』とシリウス版コミックス「蒼穹のファフナー」3巻に描かれている。 一騎と総士とは異なり真矢の場合は未遂で済んだものの、一騎が総士に対して罪悪感を抱いていたように、真矢も翔子に対して罪悪感を抱いていた。 一期の物語開始時の一騎と総士、真矢と翔子の関係を表にまとめると、以下のようになる。 2組の関係は完全に対になっている。  最初に一騎の居場所を守りたいという気持ちを持っていたのは翔子だった。 真矢が翔子の墓前でこう言っていることからも明らかなように、真矢はいなくなった翔子の意思を引き継ぐ存在だった。冲方丁も一期の時、真矢について次のようなコメントを残している。 冲方丁は「いろんな意味」と言っているが、一期で真矢を通して描かれたのは「翔子の死の意味」のみだった。しかし『EXODUS』において、真矢が翔子からあるものを引き継いでいたことが明かされる。 「一騎の居場所を守りたい」これこそ真矢が翔子から引き継いだものだった。しかし、真矢はファフナーに乗って戦っても一騎の居場所を守ることができず、一騎はマークザインに乗って戦うことを選び、真矢のいるシュリーナガルへやってきた。 真矢は自分の言葉が一騎には届かないことがわかっていた。 それ故、一騎と共にシュリーナガルへ来た総士に本音をぶつけてしまう。  しかし、真矢は人類軍に追われながらシュリーナガルの住民と竜宮島へ向かう旅の途中で、守るべき対象が次第に変わっていった。 人類軍の爆撃機を攻撃した時は「家族も仲間もいた」とエクスキューズしていた。真矢は人類軍の爆撃機を攻撃した時は「家族も仲間もいた」とエクスキューズしていた。シュリーナガルから移動してきた住民と竜宮島と合流する時、人類軍、フェストゥムに攻撃された。真矢はアルゴス小隊に捕らえられ、新国連の捕虜となり、そこでヘスターの考えを見せつけられた。それはバーンズが指摘しているように、新国連内部からも批判者が出る考え方だった。 それは到底、真矢には受け入れられるものではなかった。その結果、真矢の身近な人を守りたいという気持ちは一騎同様、人類全体へと拡大される。  『EXODUS』23話での真矢とアルゴス小隊との戦闘は一期6話の翔子と同じ状況(ファフナー本体に内蔵された武器以外使用不能)に置かれているが、パイロットの立ち位置と結果はすべて反転している。以下の表は 一期6話の翔子の戦闘と『EXODUS』23話の真矢の戦闘が反転していることからもわかるように、真矢は翔子の意思を引き継ぎ、二人称(一騎)から第四人称(人類)へと拡大させた。  悲しいかな、真矢は翔子から引き継いだ「あなたの居場所を守りたい」という気持ちでは、一騎と共に生きるという道を選べないということも証明してしまった。  翔子の「あなた(一騎)の帰る場所を守る」という気持ちを真矢とは別の形で引き継いだキャラクターがいる。甲洋だ。  甲洋と翔子の間にある感情は一騎を交えて「甲洋→翔子→一騎」という形になっていた。しかし、一騎が翔子を守ることができなかったことから、仲のよかった一騎と甲洋の間には確執が生まれてしまった。 甲洋は一騎に対してライバル意識を持つようになり、アーカディアン・プロジェクトで建造された別の島を探索した際、島の奥深くに取り残された真矢と溝口さんの救出作戦に自ら志願する。 甲洋は言葉通り真矢と溝口さんの乗る救命艇を救出して一騎に手渡したが、甲洋自身はフェストゥムに中枢神経のみ同化され、スレイブ型のフェストゥムとなった。その後、コアの姿となり『HEAVEN AND EARTH』では島を救ったが、ニヒトにマークフィアを破壊された時にどこかへ消えてしまった。『EXODUS』でカノンが自らの命と引き換えに未来を導いた結果、甲洋は人の形を取り戻すことができた。その時、甲洋は自身が思いを寄せていた翔子の「あなたの場所を守る」という気持ちを引き継いだ。その際、その対象が「あなた」という二人称ではなく、島の「みんな」という三人称へと広がっていた。  一期6話でいなくなった翔子の「好きな人の居場所を守りたい」という気持ちは、『EXODUS』において翔子の親友だった真矢と翔子に思いを寄せていた甲洋が引き継いだ。しかし、この気持ちが「あなた」から「みんな」へと拡大した時、ポジティブな部分とネガティブな部分が生まれてしまう。『EXODUS』では甲洋通してポジティブな面を描き、真矢を通してネガティブな面を描いた。そのネガティブな面を突き詰めた所にいるのが、皮肉なことにヘスターやミツヒロ・バートランドだった。竜宮島とは思想的に対立する新国連上層部の考えは決して理解しがたいものではなく、島の子どもである翔子が持っていた感情のネガティブな面だったということを『EXODUS』で証明した。 蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-19-1「”あなた”から”みんな”へ Part1」 翔子は島(というより一騎)を守るために第6話で死んでしまったわけで、そのことを真矢がどう理解して、対処していくかも大きなテーマになっていきます。 "あなたは、そこにいますか?" All Rights reserved. アニメ広場(以下当サイト)は各動画共有サイトにあるアニメ情報をまとめたリンク集サイトです。Copyright © 2018 アニメ広場.