アルツハイマー病 アミロイド 凝集

この発見によりA 目次体内では酸化物質と抗酸化酵素が拮抗しあうことで、正常なヒトの代謝が支えられている。老化によって抗酸化酵素は減少していくが、アルツハイマー病患者ではより大きく抗酸化酵素が減少していると考えられている。抗酸化酵素の減少によって活性酸素の一種であるフリーラジカルが優勢となり酸化還元ホメオスタシス拮抗関係の均衡が崩れ、酸化ストレスが引き起こされる。 アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患では脳は酸化的な損傷を示しており、多くの場合酸化ストレスが関係している。酸化ストレスの発症機序自体は比較的はっきりと確立されているが、酸化ストレスが神経変性疾患の原因なのか結果なのかといった点においてはそれほど明確ではない。脳は高い酸素消費率によって多くの活性酸素を生成する臓器。また脳は酸化されやすい脂質を主要な材料として構成されていることから、活性酸素の影響を著しく受けやすい。特に脳の膜リン脂質はフリーラジカルに脆弱な多価不飽和脂肪酸で構成されており、アルツハイマー病患者の脳において脂質過酸化反応の増加により変性が見出される。その中でも特にニューロンは、アストロサイトと異なり少量しかグリコーゲンが蓄積できないため、ミトコンドリア呼吸が損なわれた際の解糖系を増強する能力が弱く、ニューロン機能を維持するためにはグルコースと酸素の持続的な利用に強く依存する。アルツハイマー病患者の脳では、側頭葉において脂質化酸化の増加が報告されている。ApoE4対立遺伝子保有者の脳では脂質過酸化の感受性が高い。脳内で酸化ストレスに対抗するために合成される抗酸化酵素は、老化とともに減少する。抗酸化酵素の減少、つまり酸化還元反応の不均衡によって酸化ストレスが増大し、抗酸化経路の機能不全が生じうる。ミトコンドリアの電子伝達系では、酸素の98%が消費され残りがスーパーオキシド(O2)、過酸化水素(H2O2)、次亜塩素酸が生じる。O2とH2O2はしばしば過剰となり、鉄、銅などの金属を触媒としてより反応性の高いヒドロキシラジカル(OH)を生成させる。特に鉄は、脳内に豊富に存在しフリーラジカル反応を加速させう可能性がある。また、脳脊髄液は鉄イオンと結合できないため脳内に蓄積しやすい。鉄キレート剤が抗酸化剤よりも酸化ストレスに対して保護効果を持ちうる可能性があることが、多くの研究者によって指摘されている。過剰の二価鉄は、還元型グルタチオンの濃度を低下させ酸化型グルタチオンの形成をもたらす。アルツハイマー病患者の脳は、アミロイドβの蓄積と神経原線維変化の沈着に関連して、相当な酸化的損傷を示している。この酸化的損傷による神経変性には鉄、亜鉛、銅などのバイオメタルが重要な役割を果たす。アミロイドβと前駆体であるAPPは、銅と亜鉛の結合部位へ高い親和性をもつ。神経変性疾患を有する患者では、中枢神経系に鉄を蓄積することが観察されている。鉄ホメオスタシスの破壊と関連する神経変性疾患には、アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントン、ALS、NBIAが含まれる。過酸化脂質を生じさせる鉄誘導ラジカルは、カタラーゼ、グルタチオンによって還元される。可溶性アミロイドβのメチオニン残基により酸化ストレスは生じうる。このことはアミロイドβ凝集体ではなく可溶性アミロイドβ単体が、アルツハイマー病の酸化ストレスを介した神経毒性に寄与することを示唆する。アミロイドβがLRP1を酸化し脳内へのアミロイドβの蓄積をもたらす。アルツハイマー病海馬では4-HNE-LRP1の存在が観察されている。銅、鉄はアミロイドβと複合体を形成してROSを生成させる。アミロイドβと鉄の複合体(Fe-Aβ)の酸化還元活性は相対的に低く、アミロイドβと銅の複合体(Cu-Aβ)が高い。そのためアミロイドβに結合した銅イオンがより多く研究されており、アルツハイマー病と関連するROS生成、酸化ストレスをもたらしている可能性が示唆される。ADは銅の過剰ではなく配位構造の異常銅キレータ-よりも分解処理による銅ホメオスタシスの回復 ネプリライシン、IDE等亜鉛の干渉による銅のROS産生への影響4-HNEは神経原線維変化を促進することにより、タウの立体構造を改変することができる。4ニトロ化されたタウタンパク質は、タウ封入体の前段階にあるため、アルツハイマー病の初期の事象として生じる。脳タンパク質の酸化は、ニューロンおよびグリア細胞の機能に関わる重要な酵素(グルタミンシンターゼ、クレアチンキナーゼ)への影響を及ぼす可能性がある。アルツハイマー病患者の脳において、タンパク質酸化はより顕著である。膜タンパク質が細胞質タンパク質よりも酸化的損傷を受けている。可溶性オリゴマー、プロトフィブリルは正しく折りたたむことができないミスフォールドタンパク質によって酸化損傷を増大させている可能性がある。タンパク質凝集と酸化ストレスの組み合わせが神経変性疾患における細胞死のカスケード事象を引きおこす仮説が提唱されており、ミスフォールドタンパク質の増大は、プロテアソーム機能不全をもたらし、酸化タンパク質の凝集と蓄積をもたらす。DNAの塩基は水酸化、カルボニル化、ニトロ化を伴う酸化ストレス損傷に対して脆弱性をもつ。アルツハイマー病の早期、MCIの段階でDNAの損傷を示す8-OHG、8-HA、5-OHCマーカーの上昇が示される。糖の非酵素的反応により形成される糖化最終産物(AGE)の細胞外蓄積は、糖化タンパク質の酸化促進により引き起こされる。低レベルの活性酸素(ROS)は、ヒトの健康に不可欠。病原性微生物の侵入を防ぎ死滅させるために食細胞(好中球、マクロファージ、単球)は活性酸素を武器として用いている。一酸化窒素(NO)は、血流、血栓症、神経活動を調節するための細胞間メッセンジャー。一酸化窒素(NO)は、細胞内の病原体や腫瘍を殺す上でも重要な役割を果たす。細胞内の活性酸素は、細胞シグナル伝達カスケードの二次メッセンジャーとして作用し細胞アポトーシスを誘導し、腫瘍形成を抑制する機能をもつ。生体は、低いレベルの酸化ストレスに適応応答することによって、身体の防御機能を高める。

これらのタンパク質凝集体は30 種類以上の病気の原因であり、例えばアルツハイマー病はアミロイドβ(aβ)ペプチドが凝集してできたオリゴマー ※4 やアミロイド線維 ※5 が脳に蓄積することが原因と考えられています。 自然科学研究機構生命創成探究センター/分子科学研究所 奥村グループ アルツハイマー病発症につながると考えられるアミロイドβペプチド(Αβ)凝集体を短波長の光の照射により無毒化する光触媒を開発してきたが、より生体との適合性の高い波長の光で働く触媒が … このことはアミロイドβ凝集体ではなく可溶性アミロイドβ単体が、アルツハイマー病の酸化ストレスを介した神経毒性に寄与することを示唆する。 Review: Alzheimer's amyloid beta-peptide-associated free radical oxidative stress and neurotoxicity - PubMed Keywords:アルツハイマー病,コリンエステラーゼ阻害薬,グルタミン酸NMDA受容体阻害薬, アミロイド免疫療法,アミロイドβ 凝集阻害療法 (日老医誌 2011;48:597―605) はじめに 1999年11月の認可以来,本邦におけるアルツハイ 伊藤 暁  (自然科学研究機構分子科学研究所 助教)(生命創成探究センター 併任)